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■日本代表、チュニジアに完敗(その2)

 前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍をしたのは、右ウイングの伊東選手。

時折、原口選手との連携プレーも織り交ぜながら、スピードで相手を振り切って右サイドを突破、得点チャンスを何度かつくり出していました。味方が決めてくれればアシストがつきそうな正確なクロスもあり高く評価できます。

後半2分、伊藤選手からのクロスを合わせた場面ですが、始めからパス以外の選択肢を考えていないように見えました。もしシュートを打っていたら決まっていたかもしれません。


 後半15分から左ウイングとして投入された三笘選手は、個人技で相手の右サイドを攻略しました。相変わらず彼のドリブル突破には目を見張るものがあるのですが、相手に2対1や3対1で対応されてしまい、残念ながらゴールにはつながりませんでした。

チームで三笘選手のドリブルを生かす戦術が欲しいところです。

冴えわたったドリブルに比べると、シュートやパスの正確性には課題が残ったかもしれません。
 
 
 逆にプレーが及第点に満たなかったのはCBの吉田選手。

後半7分、伊藤選手が競り合ったボールが相手にこぼれ、日本のDFラインのウラへスルーパスを出されると、チュニジアのCF11番ハニッシに抜け出され、吉田選手がボールに向かってスライディングしたところ届かずに相手選手を倒してしまいPK献上。

空中戦を競った伊藤選手のカバーに行った判断は正しかったのですが、吉田選手が見ていたハニッシへのマークを板倉選手に受け渡さないまま目を離してしまったのがまず失敗でした。

ハニッシがボックス内でスルーパスを受けたとしてもゴールへの角度がどんどん狭くなる方向でしたし、板倉選手のカバーも間に合っていたので、それほど焦る必要は無かったのですが、ピッチが雨でスリッピーだったので、吉田選手も途中で「しまった!」と気づいたものの「時すでに遅し」、一度スライディングしたらもう止まることができずに相手を倒してしまいました。

後半30分の2失点目は、相手のゴールキックを吉田選手が7番ムサクニに体をぶつけてマイボールにしたのですが、板倉選手かシュミット選手が処理してくれるものと勝手に思い込んでしまったことが原因で、吉田選手がボックス内で相手にボールを奪われて失点。

後半ロスタイム3分にも、吉田選手のパスをカットされ、こぼれ球の奪い合いにも競り負けて、チュニジアのカウンターから17番ジバリにシュートを決められるなど、3失点にからんでしまったのは非常に残念でした。


 CBの板倉選手は後半30分、吉田選手とお見合いのような状態となり、そこから相手にボールを奪われて失点につながってしまいました。

吉田選手が責任を持って処理すべきケースではありましたが、板倉選手も吉田選手としっかり意志疎通を行った上で、積極的にボール処理に向かっても良かったと思います。

チームの3失点目の場面では、相手にカウンターで2対3の状況をつくられてしまった時点で失点を覚悟しなければならない状況だったのですが、板倉選手がドリブルする17番ジバリに対してシュートコースを消さずに後退したため、鮮やかなミドルを決められてしまいました。

板倉選手の左前方でフリーランニングするチュニジアの25番へのパスを牽制しながらドリブルするジバリに対応したのは、1対2の守備原則に従ったものでしたが、ゴール前でそれをやってしまうとシュートコースがガラ空きなので、やられてしまいます。

失点リスクが一番高いのはボール保持者によるシュートであり、自分の左側へパスを出されてもまだ対応の余地はあるので、まずジバリのシュートコースを消すべきだったように思います。

あるいは山根選手にジバリとの1対1を任せ、パスが出たら板倉選手がカバリングというふうに役割分担をはっきりさせた方が良かったかもしれません。(下図)

DFが相手のカウンターに2対3で対応する状況は実戦では珍しくないので、なるべく失点を防ぐことができるようにトレーニングを積んで欲しいです。

                       ↓ 
   ↓                  (21)
  (25)        ↓
            (17)
             〇
             山根
             
         板倉                
         

↓ゴール方向
   


 右SBとして先発の長友選手は、相手の左SB4番アブディとの空中戦に競り勝って鎌田選手の決定機の起点となったプレーは良かったのですが、ゲームの前半はマッチアップしていた7番ムサクニを始め、フィジカルコンタクトに強い相手との対人守備で苦しみました。失点にはつながらなかったものの、前半3分には13番サッシとの空中戦に敗れてフリーでヘディングシュートを許す場面もありました。

このチームにビルドアップをする時の約束事がないのが一番悪いのですが、前半13分に相手のプレスにハメられてボールロストするシーンも。

自分をマークしている相手の左ウイングをひっぱるように高い位置を取るか、中に絞って「偽SB」的なポジションを取り、スムーズに攻撃をビルドアップできるような戦術理解も欲しいところです。


 左SBの伊藤選手は、及第点に近いプレーでしたが、吉田選手のPK献上につながった1つ前のプレーでは、伊藤選手がジャンプする直前にズル賢い25番スリマニに後ろから押されてヘディングが空振りになってしまいました。 

こういう場合、ジャンプする前にスリマニの体にぶつかって相手のバランスを崩してから、前に出てクリアするようなマリーシアが求められます。

このチームに約束事がないのが一番いけないのですが、攻撃をビルドアップする時は自分をマークしている相手の右ウイングをひっぱるように高い位置を取るか、中に絞って「偽SB」的なポジションを取るべきでしょう。


 ピヴォーテの遠藤選手は、相手チームにプレスのハメどころとして狙われていたこともあったのですが、ボールロストやパスミスが多く「らしくない」出来でした。
 
昨年夏の東京オリンピックに参加し、そこからほぼオフ無しでプレーしてきたせいで「お疲れモード」だったのでしょうか。プレー全体にキレがありませんでした。


 左インテリオールの鎌田選手は、チームで攻撃をビルドアップするのを助けるような、気の利いたポジションを取ることができていましたが、前半34分の決定機は絶対に決めないといけません。

利き足である右を振ってシュートしようとしたところ上手くヒットしなかったのですが、左足でボールを確実にミートし、ゴールのワク内に流し込むことだけに集中したほうが得点しやすかったかもしれません。


 右インテリオールの原口選手は、伊東選手とのコンビネーションで右サイドを崩すプレーはまずまず良かったのですが、GKやバックから攻撃をビルドアップする際、適切なポジションを取って正確にパスをさばく能力についてはまだ改善すべきところが多いです。

再三指摘している通り、一番いけないのはチーム戦術の構築を選手に丸投げしている監督さんなのですが。


 左ウイングとして先発の南野選手は、キックオフ直後に伊藤選手からパスをもらって数回チャンスメークをしたのですが、相手に修正されて以降は左ウイングとしてまったく機能せず。
 
前回記事で詳しく解説したとおり、左ウイングとして局面・局面で正しいポジションを取る能力について修正すべき点が非常に多いです。

もっとも、彼の特徴を最大限に生かせるのはペナルティエリアの横幅の内側であり、彼を左ウイングとして起用し続ける森保さんの「サッカーを見る目」の無さが一番の問題なのですが。 

 CFとして先発の浅野選手&後半15分からCFとしてプレーした古橋選手ですが、チーム全体として攻撃の組み立てに苦しみ、彼らに良い形でボールがほとんど入らなかったのは気の毒でした。

空中戦にストロングポイントがあるわけではない彼らにロングボールを放り込む森保監督の戦術にも大きな問題アリです。


 後半37分から右SBとして投入された山根選手ですがロスタイム3分、相手のカウンターで2対3の状況をつくられた場面で、ドリブルする17番ジバリに対して誰がシュートコースを消しに行くのか、板倉選手と役割分担があいまいになってしまったところは修正点です。

板倉選手のところで詳述したように、比較的遠い距離にいたチュニジアの21番へのパスを捨てて、山根選手がジバリとの1対1を受け持つというのも一つのアイデアでしょう。


 GKのシュミット選手ですが、後半10分PKの場面ではギリギリまで飛ぶのを我慢して15番ラマダンのキックの方向を見切ったのですが、シュミット選手がセーブするチャンスは無く、GKにコースを読まれたとしても絶対に手の届かない場所に正確に蹴った相手を褒めるしかありません。

その直前に吉田選手が相手にPKを与えてしまった場面ですが、彼や板倉選手とも良くコミュニケーションをとって、失点につながるような「お見合い」が絶対に起こらないようにして欲しいです。


 言及の無かった選手は及第点の出来か、プレー機会が少なく評価の対象外です。  


     ☆       ☆       ☆


 キリンカップ2022の決勝戦、ホームという有利な条件だったにもかかわらず、0-3でチュニジアに大敗という結果はあってはならないもので、試合内容の方も何ら見るべきものはなく、森保ジャパンがこれまでの4年間、ずっと「個の能力」頼みのサッカーをやってきたツケが一気に回ってきたようなゲームでした。

チュニジアに欧州4大リーグでプレーする選手はほとんどおらず、選手個々の能力では明らかに日本の方が上でしたが、4-1-4-1のブロックをつくって組織的に守ってくる相手に対し、チームワークで攻撃しゴールを奪うということが最後まで出来ませんでした。

そうした意味において、森保監督はチュニジアのカドゥリ監督に完敗です。

相手を攻めあぐねてグダグダの展開になると、バック陣のリズムまで悪くなって、イージーミスやカウンターで失点して負けるというのは、森保監督の典型的な負けパターンであり、この4年間、選手の顔ぶれが多少変わっただけで、森保ジャパンは何の進歩・発展も無かったことを再確認させられた試合でした。




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■コメント

■ [名無しさん]

面白い記事が
https://www.tokyo-sports.co.jp/soccer/japan/4270157/
> 21日に取材に応じた森保監督は、三笘が孤立していたとの指摘に対して「三笘に関しても本人からもそういう話があったし、メディア上でも話をしていると思うが、まずメッセージとしては彼自体が戦術であるというところ。個で打開する能力がある選手であるからこそ託している。ブラジル戦以降は研究もされて、個の突破が難しいと本人も感じながらやっているだろうが、世界とやっていくうえで『薫が戦術なんだ』と」と力説


東スポなので流石にネタだとは思いますが本当に言ってたらドン引きですね笑
いつの時代のサッカーですかという

■名無しさんへ [スパルタク@管理人]

私もその記事を読みました。

名無しさんのタレコミ情報も参考にして「6月シリーズを振り返る」の記事をアップしています。

もしよろしければご覧ください。
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プロフィール

スパルタク

  • Author:スパルタク
  • 1990年9月から日本代表を応援しているサポーター。

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